こども・若者の参画を考えているみなさんへ

こどもに意見を聴くことに、
本当に意味はあるのでしょうか。

こどもたちに使ってほしい施設だから、意見を聴きたい。

けれど、実際に聴いても、実現できないアイデアや、事業の条件とかけ離れた意見が出るだけではないか。そもそも、こどもに意見を聴くことで、計画や施設は本当によくなるのか。

意見を集めること自体が、目的になっていないか。

制度上、参加が求められているからというだけの、アリバイづくりになっていないか。

聴いた意見を、どこへつなげればよいのか。

こども・若者の参画に意味が生まれるかどうかは、意見を聴くこと自体ではなく、何について聴き、考えるために何を用意し、その意見を誰が受け取り、どのように判断や実践へつなぐかによって変わります。

一見すると実現が難しいアイデアの中にも、その場所に何を求めているのか、大人が前提としている使い方と何がずれているのかを知るための手がかりがあります。

このページでは、こども・若者の参画を形式的な意見聴取で終わらせず、計画、空間、活動、運営へつなげるために、大人の側で何を準備し、どのようなプロセスを設計すればよいのかを考えます。

コラム

こども参画はいま、どこにあるのか

こども参画は、近年生まれた流行や手法ではありません。こども自身に備わる権利を土台に、制度の整備と、地域での実践の積み重ねによって育てられてきました。

こども参画は、権利から始まる

こどもの参画は、大人が好意によって与える機会ではありません。

日本も批准している「子どもの権利条約」は、こどもが自分に関係することについて、自由に意見を表明する権利を定めています。

その意見は、ただ聴かれるだけでなく、こどもの年齢や成熟度に応じて、相応に考慮されなければならないとされています。

こども参画は、こどもを支援や保護の対象としてだけでなく、意見を持ち、社会に関わる権利の主体として捉えるところから始まります。

1994年

日本が子どもの権利条約を批准。

2023年

こども家庭庁が発足し、こども基本法が施行。

2025年度末

多くの自治体で、こども計画や条例の策定・改定が進む。

これから

意見聴取の数だけでなく、参画の質が問われる段階へ。

制度として、意見を反映することが求められるようになった

こども基本法では、国や地方公共団体が、こども施策を策定し、実施し、評価するときに、こども・若者などの意見を反映するために必要な措置を講ずることが定められました。

意見を聴くことは、計画をつくるときだけに求められているのではありません。施策を実施し、その成果を評価し、見直していく過程まで含まれています。

また、都道府県と市町村には、地域の状況に応じた「こども計画」を策定する努力義務が設けられました。これを受け、2025年度末にかけて、多くの自治体で計画や条例の策定・改定が進みました。

同じ「こども計画」でも、内容は一様ではない

こどもの権利や意見表明、政策や地域への参画を、計画の中心に位置づけたものがあります。

一方で、従来の子育て支援、児童福祉、少子化対策、貧困対策などの計画を統合し、改定したものもあります。

既存の福祉施策を継続し、充実させることも重要です。しかし、こどもを支援や保護の対象として捉えることと、意見を持ち、地域や社会に関わる主体として捉えることは、同じではありません。

計画の策定時にアンケートや意見交換を行っても、その後の施策の実施、評価、見直しに、こども・若者がどう関わるのかが明確でなければ、継続的な参画の仕組みができたとは言い切れません。

日本には、これまでの実践の積み重ねもある

日本におけるこどもとまちづくりの関係は、こども家庭庁の発足から始まったものではありません。

1970年代以降、生活環境や都市計画をめぐる住民参加の中で、こどもや教育の問題も取り上げられるようになりました。

1980年代以降は、こどもがまちを歩き、見つけたことを地図にし、地域の人に話を聴き、まちの将来を考える「まちづくり学習」や、こどもの視点を計画や空間づくりへ取り入れる実践が、各地で積み重ねられてきました。

地域を調べること、地図や模型をつくること、公園や施設の使い方を考えること、行政へ提案すること、自分たちで活動を企画し実施すること。こうした取組は、「こども参画」という言葉が現在のように広く使われる以前から行われています。

意見を伝えるだけではない、こども参画の実践

提案・実践・審査

こうちこどもファンド

高知市では、2012年から、こどもたちが自分たちのまちをよくする活動を提案し、助成を受けて実施する「こうちこどもファンド」が行われています。

こどもは提案する側、活動する側になるだけでなく、ほかのこどもたちの提案を聴き、質問し、どの活動を支援するかを審査する側にも参加します。

大人が制度や行政上の責任を担いながら、こどもにも、提案する人、実行する人、判断する人としての役割を渡しています。

復興・空間・継続的な運営

石巻市子どもセンター「らいつ」

東日本大震災後の石巻市では、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの支援により、「子どもまちづくりクラブ」がつくられました。

こどもたちは復興に向けた「夢のまちプラン」を考え、その中で描いた居場所の構想をもとに、「石巻市子どもセンター らいつ」の企画やデザインにも関わりました。

施設の完成後も、こどもの権利とこども参加を運営の柱とし、現在まで活動が受け継がれています。

意見を聴く動きは、急速に広がっている

近年は、こども家庭庁の「こども若者★いけんぷらす」をはじめ、国や自治体が、こども・若者から直接意見を聴き、政策へ反映しようとする取組が広がっています。

これまで行政の会議や政策形成の場へ届きにくかった声を、直接聴こうとする動きには、大きな意味があります。

一方で、意見を聴く機会が増えるほど、その後の扱いも問われます。

集めた意見は、誰が受け取るのか。何を基準に検討するのか。計画や事業のどこが変わるのか。実現しなかった意見には、どのように理由を返すのか。

意見を集めること自体が目的になると、こども・若者は、何度も同じことを聴かれながら、何が変わったのか分からないという経験を重ねることになります。

制度をつくる段階から、参画の質を育てる段階へ

いま必要なのは、意見を聴く機会を増やすことだけではありません。

何について一緒に考えるのか。考えるための情報や体験をどう用意するのか。どこまで提案し、選び、判断できるのか。計画、空間、活動、運営へどうつなぐのか。その結果をどのように本人たちへ返すのか。

自治体がこども計画や条例を整える段階から、それぞれの地域で、こども・若者の参画をどのように実質的なものとして育てるのかを考える段階へ。

これまでの実践と、権利や制度の変化を踏まえながら、意見聴取の先にある、これからのこども参画のあり方を描くことが求められています。

主な参照先

外務省「児童の権利に関する条約」/こども家庭庁「こども基本法」「自治体こども計画」「こども若者★いけんぷらす」

高知市「こうちこどもファンド」/石巻市子どもセンター「らいつ」/公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

参画の幅

参画は、意見を聴くことだけではない

自分の考えや経験を伝えることは、大切な参画の一つです。

その先には、対象について調べ、ほかの人と話し合い、案をつくり、選び、実際に試し、活動や場所の運営に関わる方法もあります。

01

知る・調べる

対象となる場所やテーマについて知り、実際に見て、使い、地域の人に話を聴きながら調べます。

02

考える・伝える

自分なりの問いや考えを持ち、ことば、絵、写真、地図、模型など、自分に合った方法で表現します。

03

対話する・提案する

ほかの人の意見や現実の条件を知り、話し合いながら、新しい選択肢や企画をつくります。

04

選ぶ・判断する

複数の案を比較し、優先順位を考えたり、審査や選考に参加したりしながら、判断の一部を担います。

05

試す・実施する

考えたアイデアを、活動や社会実験として実際に試し、実施する中で分かったことを確かめます。

06

運営する・見直す

場所や活動の運営、ルールづくり、利用状況の確認、評価や改善に継続的に関わります。

深く関わることだけが、よい参画ではありません

すべての取組で、こども・若者が判断や運営まで担う必要があるわけではありません。

テーマ、期間、責任、本人の希望に応じて、どの段階に、どのような方法で関わることに意味があるのかを考えます。より深い参加を、大人の側から一律に求めないことも大切です。

参画を始める前に

意見を聴く前に、
大人の側で決めておくこと

こども・若者に意見を求める前に、なぜ聴くのか、何を一緒に考えられるのか、その意見を誰が受け取り、どこへつなぐのかを、大人の側で整理しておく必要があります。

  1. 01

    なぜ意見を聴くのか

    何を知りたいのか、こども・若者の経験や視点を、どのような計画や事業に生かしたいのかを明確にします。

  2. 02

    何について考えてもらうのか

    こども・若者の日々の経験や知識を生かせる、具体的で意味のあるテーマを設定します。

  3. 03

    何が決まっていて、何を変えられるのか

    すでに決定している条件と、提案できること、選べること、変更できることを分けて伝えます。

  4. 04

    誰が意見を受け取るのか

    行政の担当者、設計者、運営者、地域団体など、出された意見を受け取る人や組織を明確にします。

  5. 05

    誰が、何を基準に判断するのか

    最終的に判断する人と、安全、予算、制度、利用者間の調整など、判断に用いる条件を整理します。

  6. 06

    どの計画や活動へつなぐのか

    計画、設計、ルール、活動、社会実験、管理運営など、意見を反映する先をあらかじめ考えます。

  7. 07

    いつ、どのように結果を返すのか

    何が検討され、何が決まり、何が難しかったのかを、いつ、誰から、どのような方法で返すのかを決めます。


変更する余地のないことについて形式的に意見を求めたり、意見の行き先を決めないまま場だけを設けたりすると、参画への信頼を損ないます。 「何を一緒に考えられるのか」を明確にすることが、参画の出発点です。

参画のプロセスを設計する

意味のある参画を支える、4つの設計

こども・若者の参画を実質的なものにするには、場を開くだけでは足りません。安心して関われる環境、考えるための条件、実際に役割を担える余地、意見をまちへつなぐ仕組みを、一つのプロセスとして設計します。

01

安心して関われる環境をつくる

大人や多数の意見に無理に合わせず、自分なりの方法と速さで関われる環境を整えます。

  • 話さない、休む、途中でやめることも選べる
  • 考えを変えることができる
  • 意見の共有範囲を事前に伝える
  • 個人情報やプライバシーを守る
  • 大人とこどもの力関係に配慮する
02

知り、考えるための条件を整える

いきなり意見を求めず、対象について知り、自分なりの問いを持てる情報、体験、時間を用意します。

  • 現地を歩く、見学する、実際に使う
  • 地域の人や専門家から話を聴く
  • 写真、地図、模型などで情報を伝える
  • こども・若者自身が調べる
  • 複数の選択肢や異なる立場を知る
03

提案し、選び、試せる余地をつくる

意見を述べるだけでなく、案をつくり、比較し、選び、実際に試せる機会を用意します。

  • 複数の案を比較し、優先順位を考える
  • 企画や使い方を提案する
  • 審査や選考に参加する
  • 予算の使い方を考える
  • 小さく試し、実施に関わる
04

まちへつなぎ、その後を返す

意見を記録して終わらせず、計画や場所、活動、運営へつなぎ、その経過と結果を返します。

  • 何が検討されたのかを伝える
  • 何が実現したのかを示す
  • 難しかった理由や判断の経過を返す
  • 実現しなかった意見も記録する
  • 次に関われる機会へつなぐ

こども・若者へ選択や判断の機会を渡す場合も、安全、法令、契約、予算執行など、大人が担うべき責任まで移すものではありません。

こども・若者の役割と、大人が負う責任の境界を明確にすることも、参画を支える大切な設計です。

意見聴取の先へ

意見を、まちの具体へつなぐ

こども・若者の意見は、報告書や議事録に残すだけでは、まちの変化にはつながりません。

計画、空間、活動、ルール、管理運営など、実際の事業のどこへつなぐのかを考え、実施した後も使いながら見直していくことが大切です。

01

計画や制度へ

意見の一覧を添付するだけでなく、計画の目標、施策、事業、評価の方法へつなぎます。

  • 自治体のこども計画
  • 施設や公園の基本計画
  • 地域やまちづくりの方針
  • 条例、ルール、評価指標
02

建築・ランドスケープ・公共空間へ

設計案への感想を求めるだけでなく、日常の使い方、過ごし方、活動、運営まで含めて考えます。

  • 建物や公園の配置、機能
  • 居場所や遊び場のつくり方
  • サイン、展示、家具、設備
  • 完成後の使い方と運営
03

活動や社会実験へ

考えた企画や使い方を、実際の場所で小さく試し、そこで分かったことを次の計画や改善へつなぎます。

  • イベントや体験活動
  • 空間の試験的な使い方
  • 展示、サイン、仮設物
  • 実施後の評価と改善
04

管理運営へ

場所や活動が始まった後も、日常の使い方やルール、活動の企画、評価や見直しへ継続的に関われる仕組みを考えます。

  • 利用ルールの検討
  • 活動や企画の運営
  • 運営チームへの参加
  • 利用状況の確認と見直し

こども・若者の意見をそのまま形にすることだけが、反映ではありません。意見の背景にある経験や課題を読み取り、事業の条件や、ほかの利用者の視点と重ねながら、実現できる方法へ組み替えることも必要です。

こども・若者が関わったことが、実際のまちに形として残り、使いながら育てられていくことを目指します。

まちの翻訳社が担うこと

参画の設計から、実装と運営まで伴走します

こども・若者の参画は、ワークショップの方法だけで決まるものではありません。

何を一緒に考えるのか、どこまで関われるのか、意見を誰が受け取り、どのように計画や事業へつなぐのか。その全体を整理し、実際に動かせるプロセスへ組み立てます。

01

参画の目的と範囲を整理する

何について、なぜ意見を求めるのか、何が決まっていて何を変えられるのか、誰が判断するのかを整理します。

02

情報、学び、体験を設計する

まち歩き、見学、体験、インタビュー、調査などを通じて、対象について知り、自分なりの問いを持てる機会をつくります。

03

表現と対話の方法をつくる

話し合いだけでなく、地図、写真、模型、映像、作品制作、身体を使った活動など、参加者に合った方法を設計します。

04

安心して関われる環境を整える

参加方法、情報の扱い、休むことや参加しないことの選択、大人との力関係などに配慮し、安心して関われる場をつくります。

05

意見を整理し、判断へつなぐ

こども・若者のことばを、大人に都合よく置き換えず、伝えたかったことを確かめながら、論点、条件、選択肢として整理します。

06

実装、運営、振り返りまで支える

計画や設計への反映、社会実験、活動の実施、運営体制、フィードバック、評価までを、一つの流れとして支援します。

単発の意見聴取やワークショップだけでなく、計画策定、空間づくり、社会実験、管理運営など、事業全体の中に参画を位置づけます。

こども・若者のことばと、大人の制度や事業のことばのあいだをつなぎ、実際のまちに届く形へ翻訳します。

参画の機会を、一緒に設計します

こども・若者の参画を、計画や事業の中にどのように位置づけるか。検討の段階からご相談ください。