こども参画は、権利から始まる
こどもの参画は、大人が好意によって与える機会ではありません。
日本も批准している「子どもの権利条約」は、こどもが自分に関係することについて、自由に意見を表明する権利を定めています。
その意見は、ただ聴かれるだけでなく、こどもの年齢や成熟度に応じて、相応に考慮されなければならないとされています。
こども参画は、こどもを支援や保護の対象としてだけでなく、意見を持ち、社会に関わる権利の主体として捉えるところから始まります。
日本が子どもの権利条約を批准。
こども家庭庁が発足し、こども基本法が施行。
多くの自治体で、こども計画や条例の策定・改定が進む。
意見聴取の数だけでなく、参画の質が問われる段階へ。
制度として、意見を反映することが求められるようになった
こども基本法では、国や地方公共団体が、こども施策を策定し、実施し、評価するときに、こども・若者などの意見を反映するために必要な措置を講ずることが定められました。
意見を聴くことは、計画をつくるときだけに求められているのではありません。施策を実施し、その成果を評価し、見直していく過程まで含まれています。
また、都道府県と市町村には、地域の状況に応じた「こども計画」を策定する努力義務が設けられました。これを受け、2025年度末にかけて、多くの自治体で計画や条例の策定・改定が進みました。
同じ「こども計画」でも、内容は一様ではない
こどもの権利や意見表明、政策や地域への参画を、計画の中心に位置づけたものがあります。
一方で、従来の子育て支援、児童福祉、少子化対策、貧困対策などの計画を統合し、改定したものもあります。
既存の福祉施策を継続し、充実させることも重要です。しかし、こどもを支援や保護の対象として捉えることと、意見を持ち、地域や社会に関わる主体として捉えることは、同じではありません。
計画の策定時にアンケートや意見交換を行っても、その後の施策の実施、評価、見直しに、こども・若者がどう関わるのかが明確でなければ、継続的な参画の仕組みができたとは言い切れません。
日本には、これまでの実践の積み重ねもある
日本におけるこどもとまちづくりの関係は、こども家庭庁の発足から始まったものではありません。
1970年代以降、生活環境や都市計画をめぐる住民参加の中で、こどもや教育の問題も取り上げられるようになりました。
1980年代以降は、こどもがまちを歩き、見つけたことを地図にし、地域の人に話を聴き、まちの将来を考える「まちづくり学習」や、こどもの視点を計画や空間づくりへ取り入れる実践が、各地で積み重ねられてきました。
地域を調べること、地図や模型をつくること、公園や施設の使い方を考えること、行政へ提案すること、自分たちで活動を企画し実施すること。こうした取組は、「こども参画」という言葉が現在のように広く使われる以前から行われています。
意見を伝えるだけではない、こども参画の実践
提案・実践・審査
こうちこどもファンド
高知市では、2012年から、こどもたちが自分たちのまちをよくする活動を提案し、助成を受けて実施する「こうちこどもファンド」が行われています。
こどもは提案する側、活動する側になるだけでなく、ほかのこどもたちの提案を聴き、質問し、どの活動を支援するかを審査する側にも参加します。
大人が制度や行政上の責任を担いながら、こどもにも、提案する人、実行する人、判断する人としての役割を渡しています。
復興・空間・継続的な運営
石巻市子どもセンター「らいつ」
東日本大震災後の石巻市では、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの支援により、「子どもまちづくりクラブ」がつくられました。
こどもたちは復興に向けた「夢のまちプラン」を考え、その中で描いた居場所の構想をもとに、「石巻市子どもセンター らいつ」の企画やデザインにも関わりました。
施設の完成後も、こどもの権利とこども参加を運営の柱とし、現在まで活動が受け継がれています。
意見を聴く動きは、急速に広がっている
近年は、こども家庭庁の「こども若者★いけんぷらす」をはじめ、国や自治体が、こども・若者から直接意見を聴き、政策へ反映しようとする取組が広がっています。
これまで行政の会議や政策形成の場へ届きにくかった声を、直接聴こうとする動きには、大きな意味があります。
一方で、意見を聴く機会が増えるほど、その後の扱いも問われます。
集めた意見は、誰が受け取るのか。何を基準に検討するのか。計画や事業のどこが変わるのか。実現しなかった意見には、どのように理由を返すのか。
意見を集めること自体が目的になると、こども・若者は、何度も同じことを聴かれながら、何が変わったのか分からないという経験を重ねることになります。
制度をつくる段階から、参画の質を育てる段階へ
いま必要なのは、意見を聴く機会を増やすことだけではありません。
何について一緒に考えるのか。考えるための情報や体験をどう用意するのか。どこまで提案し、選び、判断できるのか。計画、空間、活動、運営へどうつなぐのか。その結果をどのように本人たちへ返すのか。
自治体がこども計画や条例を整える段階から、それぞれの地域で、こども・若者の参画をどのように実質的なものとして育てるのかを考える段階へ。
これまでの実践と、権利や制度の変化を踏まえながら、意見聴取の先にある、これからのこども参画のあり方を描くことが求められています。
主な参照先
外務省「児童の権利に関する条約」/こども家庭庁「こども基本法」「自治体こども計画」「こども若者★いけんぷらす」
高知市「こうちこどもファンド」/石巻市子どもセンター「らいつ」/公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
